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H22論文試験(特許1)

1.設問(1)について
(1)提出期限について
 翻訳文は、国内書面提出期間内(184条の4第1項)に提出しなければならないところ、
Y2については、パリ条約の優先権の発生要件(パリ条約4条A(1))及びその他の要件
(パリ条約4条A(1)、C(1)、D)を満たすので、優先権の効果(パリ条約4条B)が発生
しているため、国内書面提出期間は優先日である平成19年6月1日から2年6月となる。
また、184条の5第1項の書面を、国内書面提出期間の満了の2月から満了までの間に
提出している場合は、当該書面の提出日から2月以内に翻訳文を提出することができる。
(2)翻訳文を提出しなかった場合
 取り下げられたものとみなされる(184条の4第3項)。
2.設問(2)について
(1)結論
出願Y2は拒絶の理由の根拠とならない。
(2)理由
乙は研究集会における甲の発表を見てY1を出願しているので、出願Y2にかかる
請求項1は、冒認出願として拒絶され(49条7号)、先願の地位を有さない(39条6項)。
よって、優先日にかかわらずY2は拒絶の根拠とならない。
3.設問(3)について
(1)29条1項1号(新規性)を根拠とする拒絶理由(49条2号)
Y1の出願前に、研究集会において甲が発明イを発表しているので、29条1項1号の
拒絶理由(49条2号)を有する。なお、研究集会において甲は化合物Aが着色剤として
有用であることを発表しているので、用途を着色剤に限定しても拒絶理由は解消されない。
(2)冒認出願(49条7号)
上述の理由により、冒認出願である旨の拒絶理由(49条7号)が通知される。
4.設問(4)について
(1)結論
乙は発明ロを自由に実施することはできない。
(2)理由
特許権者は業として特許発明の実施をする権利を専有するが(68条)、先願である他人の
特許発明を利用する場合には実施が制限される(72条)。利用とは、他人の発明の内容を
そっくりそのまま含み、自己の発明を実施すると他人の発明に抵触するが、その逆は成立
しない関係をいう。よって、乙がロを実施すると、甲の特許発明の技術的範囲に属し、
侵害となる。
(3)乙が取り得る対応
(a)乙は、甲に対して、通常実施権(78条)又は専用実施権(77条)の許諾を得るため交渉を
することができる。交渉が成立すれば、乙はロを実施することができる。
(b)通常実施権の交渉が不調であった場合は、特許庁長官に対して裁定を請求することができる
(92条3項)。裁定を得ることができれば、乙はロを実施することができる。
(c)その他
甲の特許発明には無効理由がないと考えられるので、無効審判(123条)は取り得ない。
以上


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